【数理統計学入門】ルベーグの収束定理の反例について【データサイエンス・機械学習】

今回は統計学の内容ではないですが, 測度論や確率論の分野では非常にルベーグの定理を紹介します. 統計学において, ルベーグの収束定理を使う場面は多々見られますが, 実際に定理の条件をちゃんと確かめる機会は少ないのではないでしょうか. そこで今回はルベーグの収束定理の条件が満たさないケースを紹介します.

1.ルベーグ(Lebesgue)の収束定理とは

定理1 (ルベーグの収束定理)
\( (X,\mathcal{B},\mu)\):測度空間. \(E\):可測集合.
\(f_1, f_2,…:E\to \textbf{R}\cup \{\pm\infty\} \):可測関数 \(s.t.\)

  1.  \(|f_j(x)| \leq g(x), j=1,2,…, x\in E\)となる可積分関数\(g\)が存在する
  2.  \(\lim_{j\to\infty}f_j(x)=f(x)\)が \(\mu-a.e.\) に成立する.

この時,

$$\lim_{j→∞}\int_Ef_j(x)d\mu(x) = \int_{E}\lim_{j→∞}f_j(x)d\mu(x)$$

 

これを簡単に伝えると, \(\lim\)と\(\int\)の交換ができる定理です. より統計学の言葉を使って上の式を少し書き換えます.

定理2
\( (\Omega,\mathcal{F},P)\):確率空間.  \(X_n,\ n=1,2,…\):確率変数\(s.t.\)

  1.  \(|X_n|\leq U,\  j=1,2,… \)となる\(U\)が確率1で存在する.
  2.  \(\lim_{j\to\infty}X_n=X,\ w.p.1\)が成立する.

この時,

$$\lim_{n→∞}E[X_n] = E[X]$$

つまり, 1,2が満たされるとき, “極限の期待値”と”期待値の極限”が一致します. 定理1における\(f_j(X_j)=X_j \)となる状況に対応しています. 2の条件がなければ,極限が存在しないことになるので必要になることが伺えます. だた, 1の条件はイメージが掴みにくいですよね. そこで, 今回は1の条件が満たされない場合にどうなるか考えましょう.

2.収束性の反例

それでは, ルベーグの収束定理が満たされない場合を考えます.

例題

\( (\Omega,\mathcal{F},P)\):確率空間.  \(X_n,\ n=1,2,…\):確率変数.
\(A_n \in \mathcal{F},\ n=1,2,…\) は排反な事象で, \(\bigcup_{n=1}^{\infty}A_n = \Omega,\ P(A_n)>0 \)を満たす. ここで,\(X_n(\omega) = P(A_n)^{-1} \textbf{1}_{A_n} (\omega)\)とする.\(\textbf{1}_{A_n} (\omega)= 1(\omega\in A_n),\ 0(\omega\notin A_n)\)である.

(1) \(X(\omega)=\lim_{n\to\infty}X_n(\omega)=0\ (\omega \in \Omega)\)
(2) \(\lim_{n\to\infty}E[X_n]=1\)
(3) 任意の\(U\)に対して\(|X_n| \leq U \)ならば, \(E[U]=\infty\)

(1)

\(\epsilon – N \)論法を使う.任意の\(\omega\in\Omega,\ \epsilon>0\)に対して, ある\(N\)が存在して\(n>N\)に対して\(X_n(\omega)<\epsilon\)を示せばよい. \(\omega\in\Omega=\bigcup_{n=1}^{\infty}A_n\)なので, \(\omega\in A_N\)となる\(N\)が存在する.ゆえに, \(A_n\)は排反なので, \(n>N\)のとき\(\omega \notin A_n\)となる. ゆえに,\(X_n(\omega) = 0<\epsilon\)が分かる.(上の図の赤で囲んだ部分より)

(2)

$$E[X_n(\omega)]=\int_{\omega\in\Omega} X_n(\omega)P(X(\omega))dX(\omega)$$

$$=\int_{\omega\in\Omega} P(A_n)^{-1} \textbf{1}_{A_n}(\omega) P(X(\omega)) dX(\omega)$$

ここで\(P(A_n)^{-1}\)は\(\omega\)によらず一定である.また,\(\textbf{1}_{A_n}(\omega)\)に関して,\(\omega\notin\Omega \)ならば0になるので積分範囲を絞ることが出来る.よって,

$$E[X_n(\omega)]=P(A_n)^{-1} \int_{\omega\in A_n} P(X(\omega)) dX(\omega)$$

$$=P(A_n)^{-1}P(A_n)=1$$

が任意の\(n\)について成立するので\(\lim_{n\to\infty}E[X_n]=1\).

(3)

書き換えるとこのようになる. 任意の\(M\)に対して, ある\(N\)が存在して,任意の\(n>N\)で\(|X_n| \leq U_N\)を満たす\(U_N\)を選ぶと, \(E[U_N]>M\)となることを示せばよい.

\(|X_n| \leq U_N \)が成立するとき,\(\omega\in A_n\)のとき\(P(A_n)^{-1}\leq U_N\)かつ\(\omega\notin A_n\)のとき,\(0\leq U_N\)が任意の\(n>N\)について成立.つまり,

$$\omega\in \bigcup_{n>N}A_n\ \Rightarrow \ P(A_n)^{-1}\leq U_N\ (\forall n>N)$$

$$\omega\in \bigcup_{1\leq n\leq N}A_n\ \Rightarrow \ 0\leq U_N$$

(\(\forall n\)は任意の\(n\)を表す論理記号.)

ここで\(P(\bigcup_{1\leq n\leq N}A_n) = W_N \)とする.これは有限個の集合の確率測度なので\(0<W_N<\infty\)

ここで, \(A_n \)は排反であり,確率測度の加法性から\(\sum_{n=1}^{\infty}P(A_n)=P(\Omega)=1\)が成り立つ. \(P(A_n)>0\)なので, \(P(A_n) \to 0\).つまり任意の\(n>N’\geq N\)に対して\(P(A_n) < (1-W_N)/M\)を満たすN’が存在する.

$$E[U_N]=\int_{\omega\in \bigcup_{n>N}A_n}U_N(\omega) P(X(\omega)) dX(\omega)$$

$$\geq P(A_n)^{-1}\int_{\omega\in \bigcup_{n>N}A_n}P(X(\omega)) dX(\omega)> (1-W_N)M/(1-W_N)=M$$

\(N’=N\)となる\(N\)を選べば,\(E[U_N] > M\)が成立する.

 

 

 

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