【分かりやすく】無下限呪術の負の自然数について考えてみた!【呪術廻戦考察】

こんにちはたくまろです。

今回は呪術廻戦で登場する五条悟を最強たらしめている生得術式「無下限呪術」について考えてみたいと思います。

漫画8巻において、芥見先生の”負の自然数”という概念について数学的に考えてみたいと思います。

漫画15巻では、芥見先生の考える”負の自然数”というのは工学的に正しい!という結論が出ていました。

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それを数学科出身の人が分かりやすく説明したので、是非ご覧下さい!

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無下限呪術「蒼-あお-」について

無下限呪術の「蒼-あお-」は空間に吸い込む反応を作って、それで敵をぶっ飛ばしたり地面をゴリゴリ削ったりできる術式でした。

作中では、「無限を強化していくと、ある時点で無限の中に負(-)の自然数が生まれる」という説明がなされていました。

五条は無限の呪力がないため、「負の自然数」という得体の知れない何かの概念をぶち込みます。
この得体の知れない「負の自然数」で、呪力を無限に使わずとも無下限呪術を使用可能にしていると考えられています。

漫画8巻では、「負の自然数」の説明で無限級数が登場します。
無限級数とは、無限に続く足し算のことです。
例えば、\(1+2+3+…\)や \(\frac{1}{2}+\frac{1}{4}+\frac{1}{8}+…\)のように無限に続く足し算を指します。

芥見先生言い分によると、

$$S=\frac{1}{2}+\frac{1}{4}+\frac{1}{8}+…$$
こんな感じで永遠に数えていった時に、最後まで数を数えきった人は存在しないので、その中に”負の自然数”がないとは言い切れないよね!

という解釈のようです。

しかしながら、漫画15巻において、編集者によってこれは規則性に従っているもので、この考え方は間違っていると言われしまいます(笑)

つまり\(S\)は$$S=\sum_{t=1}^\infty\frac{1}{2^t}$$と規則的な足し算で表せます。少し難しい記号が登場していますが、\(\sum_{t=1}^\infty\frac{1}{2^t}\)の部分は\(\frac{1}{2^t}\)を\(t=1\)から\(\infty\)まで足しなさいという意味です。

なのでこの式を見ると、“負の自然数”なんて存在しないこと分かりますよね。

負の自然数は存在するのか?

大学の数学科から大学院の数学専攻に進んで、計6年間数学を学んできましたが、残念ながら負の自然数という単語は一度も耳にしたことがありません。

そもそも自然数は正の数なので、それが負の数になるのは、どう考えてもおかしいです。
もしも、数学的に正しい表記をするのであれば、負の整数なら問題ないです。

しかし、工学的に見ると、”負の自然数”は正しいという解釈が漫画ではなされています

通常、正の数を無限に足しても負の数になることはありません。例えば、\(S=\frac{1}{2}+\frac{1}{4}+\frac{1}{8}+…=1\)になります。
2項目以降の\(\frac{1}{4}+\frac{1}{8}+\frac{1}{16}+…\)の部分を\(\frac{1}{2}\)でくくると\(S\)になるので、
$$S=\frac{1}{2}+\frac{1}{2}(\frac{1}{2}+\frac{1}{4}+\frac{1}{8}+…)=\frac{1}{2}+\frac{1}{2}S$$

$$S-\frac{1}{2}S=\frac{1}{2}$$

$$S=1$$
となります。

しかしながら、解析接続を考えれば、正の数の足し算の値が負になるという不思議な現象が起こります。
$$1+2+3+…=-\frac{1}{12}$$という不思議な式が成り立ちます。
まるで、無限の足し算の中に負の数が入っていたように感じますね。

もしかしたら、芥見先生はこれを言いたかったのかも知れませんね!

 正の足し算が負になる!?

中学レベルのやさしい説明

解析接続とか訳の分からない単語が出てくると、パニックになると思うので、まずは簡単な説明をします。

$$A=1+2+3+4+…$$ $$B=1-2+3-4+…$$ $$C=1-1+1-1+…$$

とおきます。まず、Cの値を考えます。
$$C=1-1+1-…=1-(1-1+…)$$

$$C=1-C$$

$$C=1/2$$

となりますね。次にBの値を考えます。
$$B=1-2+3-4+…$$

$$B=\ \ +1-2+3-…$$
一項ずらして各項を足してみると、
$$B+B=1-1+1-1+…=C$$
となります。よって、
$$B=1/4$$

最後にAの値を求めます。A-Bを考えてみます。

$$A=1+2+3+4+…$$ $$B=1-2+3-4+…$$

比べてみると、ちょうど奇数項が消えるので

$$A-B=4+8+12+….=4(1+2+3+…)$$

$$A-B=4A$$

$$-3A=B$$

$$A=-1/12$$

になります。確かに、\(1+2+3+4+…=-1/12\)という不思議な式が出てきましたね。
結果的には合ってるのですが、数学的にガバガバなので、もう少し数学っぽい証明も用意してます。

大学レベルの説明

先ほどの証明ではやや物足りなかった部分を、解析接続を用いて$$1+2+3+..=-\frac{1}{12}$$を簡単に証明してみます。

STEP1

$$1+x+x^2+…=\frac{1}{1-x}\ (-1<x<1)$$

高校でやったであろう初項1、公比\(x\)の数列の無限級数の和の公式を使えば出てきますね。
そんなん知らんわって人は、\(\log|1-x|\)のマクローリン展開をして両辺を微分してください。

STEP2

\(1+x+x^2+…\)と\(\frac{1}{1-x}\)を\(x≠1\)において解析接続する

STEP1の式では\(-1<x<1\)の領域でしか等式が成立しませんでした。
解析接続をすれば、\(x=1\)以外の領域であれば、等式が成り立ちます。
ちゃんとした証明をすると大変なので、適当な複素関数論の本を読んでください。

ざっくりというと、\(\frac{1}{1-x}\)という関数は\(x=1\)で発散しますが、それ以外では正則(微分可能)です。
なので、領域を広げても等式が成り立ちそうだよね!って感じです。
一致の定理によってそこら辺は保証してくれます。)

STEP3

$$\sum_{n=1}^\infty nx^{n-1}=\frac{1}{(1-x)^2}\ \ (-1\leq x<1)$$

STEP1の式を両辺\(x\)で微分してください。

左辺は、$$\frac{d}{dx}\sum_{n=0}^\infty x^n=\sum_{n=0}^\infty \frac{d}{dx} x^n=\sum_{n=1}^\infty nx^{n-1}$$となります。\(n=0\)は微分する0になります。
しれっと、微分と無限和の順序交換をしているのですが、\(\frac{d}{dx}\sum_{n=0}^\infty x^n\)が\(-1\leq x<1\)において有限かつ\(x^n\)が微分可能なので順序交換可能です。よく分からない人は気にしなくていいです。

右辺は、$$\frac{d}{dx}\frac{1}{1-x}=-\frac{1}{(1-x)^2}\times(-1)=\frac{1}{(1-x)^2}$$となります。

STEP4

$$1-2+3-4+…=\frac{1}{4}$$

STEP3の式に\(x=-1\)を代入すればSTEP4の式が求められます。

それでは、\(A=1+2+3+…\)としてSTEP4の結果を使うと、
$$A=(1-2+3-4+\dots)+(4+8+12+\dots)$$

$$A=\frac{1}{4}+4A$$

$$-3A=\frac{1}{4}$$

$$A=-\frac{1}{12}$$

が分かります。

まとめ

今回は”負の自然数”の存在について考えてみました。

作中でも

現実世界に「-1個のリンゴ」みたいな虚構、つまりマイナスの空間ができると。
で、このマイナスの空間が現実世界に生まれると、均衡を保とうとする感じで世界はマイナスを埋めようとするんだよね。
だから虚構(マイナスの空間)が生まれたところに向かって吸い込む反応が作れる。

と無下限呪術の「蒼-あお-」の説明では述べられております。

今回の結果を解釈すれば、正の数の無限級数を飲み込む何かマイナス空間のようなものが考えられるのではないでしょうか?
そう考えると、“負の自然数”という考えは合っているのかも知れませんね!

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